大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)2078号 判決

本件記録を調べて見るに、原判決は、証人杉谷はつのの原審公判廷における供述を証拠としていて、右供述の中には、所論のように「三万円の金は杉野とよみとは全然関係なく、白井さんがチンピラであるので、後のことがこわいと思つて貸しました」との旨の供述があるけれども、原審は、この点を証拠としたのでなく、右証人の供述の中、被告人が本件被害者杉野とよみを判示特殊飲食店杉谷はつの方に連行し給仕婦として、住み込み働かせることにし、被告人が杉谷から金三万円を借り受けた事実のあることを供述している部分を証拠としていることが明らかであるから、原判決は、原判示犯罪事実と反対の事実を認め得る供述を証拠としていないから、採証の法則に違反はない。刑事訴訟法第三百三十五条第一項には、有罪の言渡をするには、証拠の標目を示さねばならない旨を規定し、証拠の内容まで説明することを要しないことになつているので、或る証拠の中に一部は有罪の証拠となる部分があり、又これと反対の部分があつて右両者を切り離して見ても、その証拠の趣旨を歪曲するものと認めることができないときは、裁判所は、自由心証により、何れの部分を採用すると自由であつて、かかる場合には、有罪の証拠となる部分を証拠とする趣旨で、証拠の標目を掲げたものと見るのが正当である。本件においても、証人杉谷はつのの供述の中には、有罪とするには矛盾する供述があるけれども、有罪と認定するに必要な証拠もあり、その部分を採用しても、右証人の供述の趣旨を歪曲したものとは認め難いから、原審が右証人の供述を証拠としたのは、正当で、論旨は、理由がない。

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